営業で使われる心理テクニック|ドア・イン・ザ・フェイス効果とは?

家電量販店で、最初に十数万円する上位モデルをすすめられたとします。
予算オーバーで断ると、店員はすぐに「では、こちらはいかがですか?」と次に安いモデルをすすめてくる。
最初に高い値段を見たあとだと、二番目の価格がなぜか手頃に感じられて、つい財布のひもが緩んでしまう…

このように、最初に大きな要求を提示し、その後に本命の提案を通しやすくする心理的手法は
ドア・イン・ザ・フェイス効果」と呼ばれます。

似たしくみに「フット・インドア効果」もあります。
こちらは最初に小さな要求を提示して承諾させ、次の少し大きな要求も断りにくくさせる手法です。
ドア・イン・ザ・フェイスとは、逆の手法ですね。

こちらの記事ではドア・イン・ザ・フェイスについて日常の例も交えながら解説していきます。

関連記事:なぜか断れない…?小さなお願いから心を掴む|フット・イン・ザ・ドア効果とは?

目次

ドア・イン・ザ・フェイス効果とは何か?

名前は、最初の大きな頼みごとが「目の前でドアをバタンと閉められる」ように断られるところから来ています。
手順はいたってシンプルです。

相手がまず断るような、大きな要求をあえて提示する
断られたら、本命であるもっと小さな要求を出す

これだけで、最初から本命の要求を伝えるよりも、要求を受け入れてもらえる確率がグッと高くなることが知られています。

この効果は、社会心理学者ロバート・チャルディーニらによる1975年の実験で示されたものです。
実験ではまず、大学生に対して「非行少年のカウンセラーとして、2年間、毎週2時間ボランティアをしてほしい」という非常にハードなお願いをしました。当然ほとんどの学生が無理だと断ります。

そこで研究者は、すかさず
じゃあ、一度だけ少年たちの動物園への付き添いをしてもらえないか?」と、お願いをします。

すると、なんと約50%の学生が「それならいいですよ」と承諾したのです。
一方で、最初から「動物園の付き添いをお願いします」とだけ頼まれたグループは、約17%しかOKしませんでした。

つまり、内容はまったく同じなのに、
お願いする順番を変えただけで、成功率が3倍近く跳ね上がったことになります。
研究者はこの現象を、相手が「譲歩された」と感じる心理が関係していると説明しています。

大きなものから小さなものへと要求を引き下げることで、
相手は「じゃあ、こちらも少しは譲歩しないと申し訳ないな…」という気持ちが生まれます。
これは、人からもらった恩は返したくなる「返報性(へんぽうせい)の原理」によるもので、
人は無意識のうちに、受け取ったものと釣り合いを取ろうとする傾向があるとされています。

日常にあるドア・イン・ザ・フェイスの例

営業の場面に限らず、この原理は身の回りのさまざまな場面で起こっています。

サブスクの解約時の引き止めオファー

解約しようと手続きを進めていると、引き止めオファーが出てきた経験ありませんか?

「無料で1か月間延長できます。」
「半額で3か月間利用できます。」
「年間プランに変更で月額○○円に」

私たちが「解約する」と伝えたのに対して、サービス側は「それなら条件を見直すので、もう少し続けてもらえませんか?」と歩み寄ってきます。

解約すると決めていたのに、いざ相手が条件を下げて提案してくると、
不思議と「だったら、もう少しだけ続けてみようかな…?」という気持ちが生まれてしまう…
面白いことに、相手は目の前にいる人間ではなく、ただのシステムであっても
私たちの脳は同じように反応してしまうのです。

子供のおねだり

ドア・イン・ザ・フェイス効果は、実は親子の何気ないやり取りにもよく見られます。

例えば、子どもから「新しいゲーム機を買って!」とお願いされ、「そんなのは買えません!」と断ったとします。
すると子どもはすかさず、「じゃあ、ソフトだけでも買って!」とお願いしてきます。

本来なら、ソフトも決して安くはないはずですが、
最初に「ゲーム機」というもっと大きなお願いを断っているので、親の目には「それくらいなら、まぁいいか…」と思えてしまうわけです。

しかも、子どもが一歩引いてくれたように見えるぶん、親の側にも「一度断ったのだから、少しくらいは応えてあげなきゃ…」という気持ちが生まれます。

子どもが意識しているかどうかは別として、
これも家庭の中でよく見られるドア・イン・ザ・フェイス効果の例ですね。

ビジネスの納期交渉

例えば、取引先から「この案件、3日後までに仕上げてもらえませんか?」と依頼されたとします。
普通なら1週間は必要な作業です。さすがにスケジュール的に厳しいと伝えると、相手はすかさずこう続けます。

そうですか…それなら、5日後ではどうでしょうか?

本来であれば、5日後でも決して余裕のあるスケジュールではありません。
しかし、初めに「3日後」という厳しい条件を聞いたあとでは、不思議とずいぶん現実的な提案に感じられます。

さらに、相手がこちらの事情を考慮して譲歩してくれたように見えるため、「それなら何とか対応しよう…!」という気持ちも生まれやすくなるのです。

まとめ

今回ご紹介した「ドア・イン・ザ・フェイス効果」は、あらゆる身近な場面で使われています。

私たちの脳は、相手が譲歩してくれたと感じると、「こちらも少しは応じるべきだ」と考えやすくなります。
こうした心理は無意識のうちに働くため、自分では冷静に判断しているつもりでも、気づかないうちに影響を受けていることがあります。

もちろん、気づいたからといって毎回断る必要はありません。
ただ、もし2番目のお願いを受け入れるときがあったなら、一度冷静になって考えてみるといいかもしれません。
果たしてこれは本当に自分の意思によるものなのか…?

そんな視点を持つだけでも、相手の頼み方に振り回されにくくなりますよ。

今回の記事を読んで心理学に少しでも興味が出てきた!というかたは、ぜひ関連書籍も手に取ってみて下さいね。

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