
駅前で「アンケートに一問だけお願いします」と声をかけられ、軽い気持ちで足を止めたことはないでしょうか?
一問だけのつもりだったはずが、質問は二問、三問と続き、気づけば商品やサービスの説明まで…
断るタイミングを失ったまま、その場に留まってしまった。そんな経験をした人もいるかもしれません。
人は一度小さなお願いを受け入れると、その流れを保とうとして、次の少し大きなお願いにも応じやすくなります。
実はこれには、「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれる心理効果が働いています。
似たしくみに「ドア・イン・ザ・フェイス」もあります。
こちらは最初に大きな要求を提示して断らせたあと、本命の小さな要求を受け入れてもらう方法です。
フット・イン・ザ・ドアとは、逆の手法ですね。
この記事では、なぜ人は小さなお願いから断りにくくなるのか、フット・イン・ザ・ドアの仕組みを日常の例も交えながらにわかりやすく解説します。
フット・イン・ザ・ドアとは?
フット・イン・ザ・ドアとは、最初に小さなお願いを受け入れてもらい、その後に本命の大きなお願いを持ちかけることで、最初から大きなお願いをするよりも承諾を得やすくなる心理テクニックです。
その名前の由来は、かつて訪問販売員がドアを閉められないように片足を差し込み、まずは話を聞いてもらおうとした行動にあるとされています。
1966年、このしくみを最初に実験で確かめたのが、心理学者のフリードマンとフレイザーです。
研究では、まず家庭に対して簡単なアンケートへの協力を依頼しました。
その数日後、同じ家庭に「調査員が自宅を訪問し、家庭内の製品について調査したい」と依頼したのです。
すると、事前のアンケートに協力していた人の約53%が訪問調査を承諾しました。
一方で、最初から訪問調査だけを依頼された人の承諾率は約22%にとどまりました。
つまり、一度小さな依頼を受け入れると、その後の大きな依頼にも応じやすくなることが証明されたのです。
たった一度の小さな承諾が、その後の承諾率を2倍以上に高めたことになります。
なぜ、これほど大きな差が出るのでしょうか?
これには人が自分の言動に一貫性を持たせようとする心理が働いています。
一度「協力します」と答えると、自分自身を協力的な人間だと認識しやすくなります。
そして、その自分のイメージに沿った行動をとろうとするため、次に少し大きなお願いをされても、断るのが難しくなってしまうのです。
日常にあるフット・イン・ザ・ドアの例
フット・イン・ザ・ドアは、身近なシーンでもよく使われています。
無料体験から有料会員になる
ジムや英会話教室では、「まずは無料体験から」という勧誘がよく行われます。
無料なら気軽に参加できますが、一度通うと施設やサービスに慣れてしまい、「ここまで試したのだから入会してもいいかも」と考えやすくなります。
最初から有料契約を勧められるよりも、無料体験を挟んだほうが入会率が高くなるのは、フット・イン・ザ・ドアが働いているためです。
資料請求から契約へ
インターネット広告などで、「無料資料プレゼント!」「まずは資料請求を!」といった案内を見かけたことはないでしょうか?
住宅や保険、投資、不動産、通信講座など、購入のハードルが高い商品やサービスほど、この資料請求という仕組みがよく使われています。
資料請求は無料で簡単にできるため、多くの人が気軽に申し込みます。
しかし、一度申し込んで資料が手元に届くと、無意識のうちにその商品への関心や関わりが深まっていきます。
すると、その後に案内される「無料説明会への参加」や「個別相談」、「見積もり依頼」といった次のステップにも、自然と応じやすくなります。
企業が資料請求を重視するのもそのためです。最初から契約を求めるより、まずは小さな行動を促したほうが、その後の商談や契約へとつながりやすいからです。
私たちが何気なく行っている資料請求には、このような「小さな承諾から大きな承諾へ」というフット・イン・ザ・ドアの心理がうまく活用されています。
試着から購入へ
洋服店で服を見ているとき、「見るだけでも大丈夫ですよ。よかったら鏡であわせてみませんか?」と声をかけられたことはないでしょうか?
「あわせるだけなら」と服を体に当ててみると、店員さんは「サイズ違いもございますよ」「せっかくなのでぜひ試着してみてください」と、さらに提案してきます。
ここで「試着する」という2つ目の小さな承諾をしてしまうと、実際に着替えて鏡の前に立ったときには、心理的な変化が起きています。
もともとは買うつもりがなかったとしても、実際に着た姿を見ることで、
「意外と似合うかもしれない」「思っていたより着心地がいいな」と感じることもあるでしょう。
その結果、最後に店員さんから「すごくお似合いですね!」と購入を勧められると、
すでに「鏡で合わせる」「試着する」という2つの小さな承諾を重ねているため、「やっぱりいいです」と断るのが不思議と難しくなり、そのまま購入へ至りやすくなります。
まとめ
今回は、小さなお願いから始めて最終的な大きな承諾へとつなげる心理テクニック、「フット・イン・ザ・ドア効果」について解説しました。
日常の身近な場面にも、この心理は数多く利用されています。
人は自分の言動に一貫性を持たせようとする性質があり、一度受け入れた行動に合わせて、その後の判断や行動も変化していきます。
営業の成約率を上げたいビジネスシーンはもちろん、日常のちょっとした頼み事まで、「まずは小さなお願いから」を意識して、試してみてはいかがでしょうか?
今回の記事で心理学についてもっと知りたい!と思った方は、ぜひ関連書籍も手に取ってみてくださいね。
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